2008年5月23日金曜日

037:我がためのよき人には能々あたり、

一、我がためのよき人には能々あたり、わろき(悪き)人にはわろく(悪く)あたる(*接する)は、返々くちおしき(口惜しき)ことにて候。ちくしやう(畜生)いぬ(犬)などこそ、よくあたる人には尾をふりよろこび、又わろくあたる人にはにげ(逃)ほえ(吠)などし候へ。人となりぬるかひには(*人間に生まれたのであれば)、よき人には申におよばず、あしき人にもよくあたり候へば、わろき人もおもひ(思ひ)なをる(直る)にて候。もしそのまゝなれども、神佛のいとおしみ給ふ事也。見きく(聞く)人これをほむる(褒むる)なり。今生にわろくあたれば、又後生に人にわろくあたられ、すへ(末)の因果つく(尽く)べからず。今度因果をはたし(果し)とゞむるやうに、わろき人にもよくあたり給ふべし。人のよくば我が先世(センセ *前世)を悦び、人のわろくば又先世をうらみ給ふべし。

極楽寺殿御消息 北条重時

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