2008年5月17日土曜日

014:いかほども心をば人にまかせて、

一、いかほど(如何程)も心をば人にまかせて、人の教訓(けふくん)につき給ふべし。けふくん(教訓)する程の事は、すべてわろき(悪き)事をば申さぬ物にて候。されば十人の教訓につきぬれば、よき事十有(アリ)。又百人のけうくん(教訓)につきぬれば、よき事百あり。されば孔子(こうし)と申(まうす)尊師も、千人の弟子を持て(もちて)、気(*考え)をとひ(問)給ふとこそ承候へ(うけたまわりそうらへ)。人のけふくん(教訓)につくべき事、たとへをもつて申べし。たゞ我が心を水のごとくにもち給ふべし。ふるき詞(ことば)にも、水の器(うつは)物にしたがふがごとしとこそ申て候へ。ことにらうし(老子)経にくはしく(詳しく)とかれたり。返々人にしたがひ、人の教訓につき給ふべし。

極楽寺殿御消息 北条重時

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