一、たはぶれなればとて、人のなんをいふべからず。我はたはぶれとおもへども、人ははづかしきによりて、あやまちあるべし。たはぶれにも、人のうれしむ事をの給ふべし。よろづにはゞかり、なさけふかゝるべし。
極楽寺殿御消息 北条重時
2008年12月3日水曜日
087:弓矢の事はつねに儀理をあんずべし。
一、弓矢の事はつねに儀理をあんずべし。心ののうかなると、弓矢の儀りをしりたるとは、車の両輪のごとく、ぎりをしると申は、身をも家をもうしなへども、よきをすてず、つよきをおごらず、儀理をふかくおもふ。是は弓矢とり也。其儀りは無沙汰なれども、敵をほろぼすはかうの物也。おなじくは車の両輪のかなふごとくに心え給ふべし。ふるき詞にも、人は死して名をとゞむ、虎は死して皮をとどむ、と申事あり。いのちも身のなり行事もさだまれる事也。おしむにとまる事なし。ねがふにきたらぬだうりをしり給ふべし。
極楽寺殿御消息 北条重時
極楽寺殿御消息 北条重時
086:馬にのりてたかき坂をゆかん時は、
一、馬にのりてたかき坂をゆかん時は、生ある物なれば、くるしからんとおもひて、とゞめてやすむべし。よわき馬などにてたかき坂をばおりてひかすべし。ちく生はかなしみふかき也。(心)得べし。
極楽寺殿御消息 北条重時
極楽寺殿御消息 北条重時
085:唐土にくろをさると申ことのありし也。
一、唐土にくろをさると申ことのありし也。我はそなたへつけ給へと申、人は我かたへつけよと申。かやうにろんずるを、隣国のそせうに、王宮へのぼりけるがきゝて、人はいかなれば、是ほどやさしくよくをはなれん、と申て、それよりかへりぬ。これは其国の王の御心賢王なれば、隣国までかくのごとく、とくゆうあるこそめでたけれ。返々たかきいやしきにかぎらず、貪欲をすて、正直ならんと神にも仏にもいのるべし。
極楽寺殿御消息 北条重時
極楽寺殿御消息 北条重時
2008年9月30日火曜日
084:人の人をぬす人とさして申とも、
一、人の人をぬす(盗)人とさ(指)して申とも、雑(臓)物ろけん(露見)の儀なくば、ゆめ/\もち(用)ゐ給ふべからず。其人はたとひす(過)ごしぬとも、向後の人のにく(憎)からんずる時、空事(ソラゴト)を申つ(告)ぐる人有(ある)べし。
極楽寺殿御消息 北条重時
極楽寺殿御消息 北条重時
083:罪科しごくしたるぬす人をば、
一、罪科しごく(至極)したるぬす(盗)人をば、われ(我)はくぼう(公方)へそせう(訴訟)せざれども、仏神のばち(罰)をもかぶり(被り)、じめつ(自滅)する也。又はよその人のうたへ(訴へ)にてそん(損)する也。其時心ある人は、我が物をぬす(盗)まれて、申さゞりし事のやさしさよと、いよ/\おも(思)ふなり。
極楽寺殿御消息 北条重時
極楽寺殿御消息 北条重時
082:人の身にどんよくといふ心あり。
一、人の身にどんよく(貪欲)といふ心あり。その心をわがみ(我が身)にまかせ給ふべからず。彼心をごくそつ(獄卒)のつかひ(使)と思ひ給ふべし。かの心にさそわれ、地獄におつる也。どんよく(貪欲)の心にて、一紙半銭の物にても、ゆへ(故)なき物をとりぬれば、今生にては百ばい(倍)千ばゐ(倍)の物をうしなひ(失ひ)、後生にては地獄におつ(堕つ)べし。
極楽寺殿御消息 北条重時
極楽寺殿御消息 北条重時
081:酒の座敷にては、
一、酒の座敷にては、はるかのすへざ(末座)までも、つねにめ(目)をかけ、こと葉(言葉)をかけ給ふべし。おなじ酒なれ共、なさけ(情)をかけての(飲)ますれば、人のうれしくおもふ事也。殊/\(ことにことに)ひらう(疲労)の人には、なさけをかけてをく事なり。うれしさ限なきにより、人の用を大切にする也。
極楽寺殿御消息 北条重時
極楽寺殿御消息 北条重時
080:二人つれて道をゆかんに、
一、二人つれて道をゆかんに、たがひにした(下)の心はうちとけ給ふべからず。是はたび(旅)人とつれてゆかん時の事也。さればとて、き(気)もありがほ(顔)に見え給ふべからず。
極楽寺殿御消息 北条重時
極楽寺殿御消息 北条重時
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