2008年7月14日月曜日

064:人を見るに、

一、人を見るに、こと/''\くよき(善き)ものはなし。一もよき(善き)事あらば、それまでとおもひて、人をえらぶ(選ぶ)事なかれ。我が心だにもよき(善き)とおもふ時もあり、わろき(悪き)とおもふ時もあり。いかでさのみ人は心にあふ(合う)べき。しんるい(親類)、子ども、めしつかふ(召使)ものなりとも、さのみけうくん(教訓 *しつこい小言を)し給ふべからず。うらみ(怨み)あれば我をすて(捨て)、ほか(他)にてあしからん(悪しからん)は、聖人のはう(法)にあらず。

極楽寺殿御消息 北条重時

現代語意訳
一、人間を評価しようとしても、完璧なやつなんていない。一つでも長所があれば、それでいいと思って、えり好みしないことだ。自分の気分によって、同じ人を善いと思ったり、悪いと思ったりしてしまうものだし。いつでも自分の心に叶う人なんかいるもんじゃないよ。親類や子供、召使などに、あまり小言ばかりするもんじゃない。そいつが逆恨みして出奔して、他の奉公先でも悪いことをしたらどうする? 善悪をやかましく言うことが、必ずしも聖人の教えに適うとは限らんぞ。

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